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02/07/2007

醒めない夢

 昨晩、寝る前にシュアンが私に日本に送る荷物にまだ余裕はあるかと聞きました。コベント・ガーデンでティーポットとカップのセットを買ってくれたそうです。私がコベント・ガーデンでティーポットを買おうとしていて予定を変更したことを覚えていたのです。ただデビット・カードをフラットに置いていったらしく、支払いが済んでおらず、品物は店にあるということでした。

 日本への荷物の引き取りは朝9時から夕方5時までの間で時間指定はできないということでした。シュアンは朝からティーポットを取りに出かけましたが、間に合うかどうか不安でした。

 箱にテープを張らずに待っていると午前11時ごろ配送業者が来ました。シュアンに電話をかけたところ、ちょうど最寄の駅に帰ってきたところでした。

 しばらく業者の方に待ってもらい、慌ててティーポットを荷物に含め、箱にテープを張り、業者の人に引き取ってもらいました。

 集荷が早く済んだおかげで、少し時間に余裕ができました。ロンドンで最後の翻訳原稿を入稿し、また町にくりだしました。ロンドンのティン・パン・アレーと呼ばれるデンマーク・ストリートに行っていなかったことを思い出し、その周辺を散策しました。寒い日でした。冬の午後の弱い光を浴びたセンターポイントがピンクに染まっていました。

 ロンドンにはまだまだ私の知らない顔がたくさんありそうです。けれどもようやくさほど迷いもせず、この町を歩けるようになりました。

 2003年に友人の勧めで試験を受け、通訳学校に入学しましたが、その頃もまだ自分に通訳ができるなんても思いもしませんでした。目の前に道があるなら行けるところまで行ってみようと思い、留学を視野に入れ始めたのは2004年の春でした。一緒に通訳の勉強をしていた友人の牧師がオーストラリアのクイーンズランドに留学したというのも刺激になりました。留学を意識し始めた頃から数えれば約3年がかりの活動が、明日でひとつの区切りを迎えます。

 日本を出てから、1年半、まったく日本に戻らず、ヨーロッパ、アジア、中東、アフリカの9カ国を巡り、イギリスでは3つの町に滞在することができました。

 捨てるものはなにもない。失敗しても元の場所に戻るだけ。そんな捨て鉢な気持ちでここに来たわりには、思いのほか多くの成果を挙げられました。今、日本に来る前には見えなかった道も視野に入ってきました。同時に今の自分の限界と課題も極めてくっきりとした輪郭を描いているように思われます。

 18世紀に古代ローマの温泉の遺跡を中心として復興された町、バースはおそらく世界史上初のテーマパークではなかったかと思われます。この町で一年を過ごし悟ったことは、目を開いたままで見ることのできる夢もあるということでした。

 数年後にここで得たものをたんなる異国での楽しい思い出にしてしまわないために自分自身の記念の品はあまり用意していません。実用品や小さなものは別として、記憶を保温するためだけの目的しか持たないものはなるだけ処分しました。唯一の例外はミネラルウォーターのペットボトルに入ったサハラ砂漠の砂です。

 明日、ロンドンを発ちます。例えば、日本に帰る予定のその日に私がこの世の中から消えてしまうとどうなるだろうか、などということも考えてみました。そんなふうに終わる人生だってあってもいいのかもしれません。

 などといつもの子供じみた観念をもてあそびつつ、しみじみとイギリス最後の夜を過ごすつもりだったのですが、そうは行きませんでした。

 フラットに帰ってくると、日本から一通のメールが届いていました。日本通訳学会関西支部例会での研究発表採択決定通知でした。イギリスで書いた論文をもとにした発表のための審査を受けていたのです。日本に帰ってからも、次から次へとやることあります。浦島太郎でおなじみの優雅で残酷な感傷を噛みしめる贅沢は私には許されないようです。

 このブログはここまでにしておきます。毎日、ここでは書ききれないほどいろいろなことが起こりました。一度でもこのブログを訪問してくださったすべての方に心より感謝いたします。

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謝々
The sweetest moment comes at last.

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02/06/2007

千年橋

 配送業者への確認電話やTVライセンスの解約、その他の雑用を済ませ、早めに家を出るつもりが、あれやこれやとシュアンの引止めにあい、家を出るのは午後になってしまいました。

 近所の商店街でそそくさと用事を済ませ、小物の買い物をし、立ったままチキンバーガーを食べ、テムズのほとりにくりだしました。目的はミレニアム・ブリッジを挟み聖ポール大聖堂の向かいにそびえるテート・モダンです。

 テート・モダンにはもう何度も行きました。常設展示は、それほど感心しないこともあります。なにかのついでにちょっと立ち寄るだけのこともあったので、これはこちらの気分にも寄るのかもしれません。

 それでももともと時代の新しい美術ほど興味があるので、ここはもう一度立ち寄っておく必要を感じていました。

 最初に戦後の抽象絵画の流れをテーマにした展示を見たときに、今日はここに来て正解だったと気づきました。その後、美術館としてそれほど力を入れているとは思えないシュルレアリスムとその後の展開を扱った企画展を見て、美術史上、さほど目立った活躍はしていないイギリスとはいえヨーロッパの美術館の底力を感じました。

 他にも3つの展示を周り、足は痛みはじめていたものの、もうこれほどの美術館をゆっくりと周ることは2度とないかもしれないと思い、結局、会場の隅々まで足を運びました。

 2月15日から現代イギリスを代表するモダン・アーティスト、ギルバート&ジョージの展覧会が開催されるようです。残念ながら私は見にいけません。けれども設営中の会場を自由に覗けるようになっていて、だいたいの様子を知ることはできました。

 シュアンはもしかするとイギリスの就労許可が取れそうな見込みになってきました。給料はあまりよくなさそうですが、第一線の通訳者の事務所で働けるので非常にいい経験になると思われます。

 新しい学生ビザの申請中だけに、ちょっともったいないような気になっているようですが、シュアンのビザは1月末までだったので、そのビザを申請していなければ、今、ここにはいられなかったのです。不安に怯えながら過ごす数ヶ月を省けただけ幸運です。

 明日は日本に運ぶ荷物の集荷があるので、今日中に荷造りを終えねばなりません。

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ひさびさにこんなところまであげてもらいました!
出国まであと2日

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02/05/2007

予定外

 出国間際ということで、やらねばならないこと、やっておきたいことがたくさんあるので、あらかじめ日程表を作ってこなしています。ところが予定外のことも次々起こるので、計画通りに事を進めようとするとなかなか大変です。

 口座を解約するつもりで銀行に行きました。もうイギリスのデビット・カードも使えなくなるのかと思うと、少しずつこの社会から剥がれ落ちていくような気がしました。

 店内で1時間も待たされた挙句、ようやく担当者と話すことができました。恰幅のいい紳士で、なかなか丁寧な対応でした。世間話をするうち、自分の娘もバース大学で勉強中だなどと言っていました。やはり口座を解約するよりは残しておいたほうがいいのではないかと言われ、助言に従うことにし、住所のみ日本に変更しました。カードには有効期限が来年の10月までと記載されているのですが、これはカードの有効期限で、口座自体は残るようです。またカードが必要であれば、請求できるようです。

 ただ口座の取引を確認するうち、未払いのクレジットカード使用記録があることが発覚しました。ふだんイギリスの口座から落ちるクレジットカードはそれほど頻繁に使っていなかったのですが、使用分は自動的に口座から落ちると思い込んでいたので、混乱しました。

 なぜそんなことになっているのか、説明してもらったのですが、うまく制度が理解できず、そのうち自分が何を理解していないのかもわからなくなり、その処理はせずに帰ってきてしまいました。1年半もイギリスに住み、ここでの暮らしも終わりだというのに、またしてもこんなところで躓くのです。

 ひどく煮え切らない気持ちでフラットに戻り、シュアンを巻き込み口論したりしつつ、手元の書類を読んだり、インターネットで調べ物をしたりして、ようやく自分の置かれた状況が理解できました。

 イギリスのクレジットカードにまつわるトラブルは身の回りでも頻繁に起きていました。身に覚えのない請求などはよくある話です。けれども、今回の件はどうやら私が制度を理解していなかっただけのようです。問題を整理したときにはすでに夜の8時でした。

 明日、もう一度、銀行に行かねばなりません。この出費も予定外です。他にも予定外に清算せねばならない支出があって、急に貧乏になった気分です。

 ようやく翻訳にとりかかることができたのはその後です。このファイルは今晩中に仕上げねば、明日の予定がこなせません。出版社からは通常10時間かかると見積もられているファイルです。私は仕事は速いほうですが、それでも一定の品質を維持するためには7時間はかかります。

 今日は珍しくシュアンが夕食をすべてひとりで用意してくれました。彼女は、この数ヶ月でかなり料理の腕を上げました。私の作る料理を再現しようとしているらしいのですが、なかなかその通りにできないとのことです。別にその通りにつくる必要はまったくないし、そういう努力をしてくれるのは嬉しいことです。

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もうひとつ上までは狙えそうですね!
出国まであと3日

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02/04/2007

大家と踊り子

 大家のマークの誕生日が次の火曜ということで昨晩はこのフラットに何人かが集まってパーティーをしていたようです。昨晩、私が帰ってきたときにはフラットはもぬけの殻で、キッチンには洗っていない食器や食べ残しのケーキなどが散乱していました。

 何時ごろかわかりませんが、夜中に何人かがフラットに入ってきたのは覚えています。聴きなれない女性の、このフラットはすごく寒い、という声が聞こえました。

 午前中はリビングでマークが寝ていたので、自分の部屋で日本へ送る荷造りをしていました。キッチンは散らかっていましたが、私が後片付けをする気にはなりませんでした。

 買い物をして帰ってくると、フラットではリンが出迎えてくれました。昨日の女性の声の主はリンだったようで、シュアンの部屋に泊まっていたようです。イギリスにいる間にもう一度リンに会えるかどうかというのも気になっていたことのひとつでした。

 夕食は私とリンのふたりで2品ずつ料理しました。バースに着いた日に初めて言葉を交わした相手がリンでした。ソフィアと共にバースでの最初のフラットメイトのひとりです。

 リンもコースの最中から、大学のカリキュラム以外にいろいろなことに挑戦していました。その点では、とても話があいます。お互い、ベストを尽くしたよね、と言ったところ、いや、もっとできたはず、との答えが返ってきました。

 今になって思えば、ドーハに一緒に行った仲間はみなコース中からかなり職業意識が高かったように思えます。

 バースでの最初の2週間、リンは毎晩のように夕食の用意をしてくれました。リンはとても料理が得意なので、私はずっと料理ができないふりをしていました。

 マークは明日、バースで仕事があるので帰りましたが、リンはもう一晩、泊まっていくようです。今も目の前に座っています。私がブログを書いているのは知っていて、もう終わったか、などと聞いています。早く終わったほうがいいようです。

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もうすぐ終わりです!
出国まであと4日

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02/03/2007

かつてのすみか

 バースを訪問し、今年、バースの通訳翻訳過程で勉強中のみなさんと話してきました。みなさん、とても忙しそうなので邪魔をするわけにもいかず、あまり大勢には声をかけないようにしていたのですが、やはりわざわざ急遽時間を割いてくれる人もいました。

 ひさびさに日本語で思う存分話せる上に、みなさん、先輩扱いしてくれるので、勝手なことを滔々とまくしたてて帰ってきました。

 ロンドンの中華街で買った差し入れや、要らなくなった本などがあったので、それらを運ぶため、かつて自分が住んでいた大学寮にも行きました。

 以前はクラスメートが住んでいたあちこちの部屋に、今、別な人たちが住み、当たり前のようにそれぞれの日常を送っているのです。自分が住んでいたフラットの前まで行ってみましたが、すでに何かが変わってしまったようで、そこにはいっていけそうな感じはしませんでした。

 後輩たちにバースの駅で見送られ、21時59分発の列車でロンドンに戻ってきました。

 列車の席にひとりで座っていると、すでにやるべきことはすべてやったはずなのに、なにかをやり残しているような焦りがこみ上げてきました。

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ご声援ありがとうございます。
出国まであと5日

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02/02/2007

光熱費

 また一日中翻訳です。ひたすら同じ姿勢でPCのスクリーンを見つめ、音楽を聴いたり、たまにギターを弾いたりするだけです。ときどきインターネットでまったく必要のないサイトを覗いたりもします。今、新しいPCを購入すべきかどうか検討中です。

 昨日、マークが来ると言っていたのですが、結局、来ませんでした。いつものことです。今日、来るのかどうか分かりません。今週末、来てくれないとイギリスにいるうちに光熱費の清算ができません。

 電気、ガス、水道の契約はマークの名義のままなのですが、どうやらマークはまったく支払いをしていないようです。最近、マークへの電話が頻繁にかかってきます。突然、ガスや電気を止められたらと思うとぞっとします。もっともガスに関しては、止める前に直接徴収があるというのは経験済みです。

 夕方、ひとりでリビングにいると上空で飛行機の飛ぶ音が響きました。墜落してくるのかと思うくらいの大きな音がかなり長い間続いていました。

 このフラットの建物は築80年だそうです。イギリスでは大して古い建物ではないと思います。防音効果はあまりよくなく、夜になると上の階にすんでいる住人のいびきが聞こえることもあります。

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やっとここまで来ました!
訪問者の3人に1人に協力してもらえれば1位です!

出国まであと6日

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02/01/2007

水砥石と乙女

 ピカディリー周辺で半日CDと本を物色していました。けれども結局、書評誌を一冊買っただけです。今、日本に送る荷物を箱に詰めはじめていて、極力荷物を減らそうとしているのです。

 CDはMP3などにしてしまえばかさばらないので、日本から数百枚分は持ってきていますが、それでも持ってこなかったものに限って聴きたくなります。イギリスではそれほどたくさんのCDは買っていません。

 本はそれほどたくさん持って来れませんが、それでも手元においている本は多いほうだと思います。置いていけるものは置いていきたいのですが、すでに入手困難なものもけっこうあって、これは置いていくわけにはいきません。

 バースに置いていけば、後輩のためになりそうなものもあるのですが、それは自分もこれから使えるものなので置いていけません。置いていけるようなものは、本当にどうでもいいような本ばかりです。

 簡単に手に入るようなものでも、それなりに値の張る本は持ち帰ったほうがいいように思えます。重量を減らすために高い本を置いて帰って、わざわざ買いなおすならどちらが得になるかわかりません。

 もちろん金銭的な損得は計算すればわかるのですが、正確な判断のためには肉の量り売りに使うような正確な重量計を今から購入する必要があります。さらにその重量計を持って帰るとなると、その重さを正確に測るための器具も必要です。

 もともと私のコースはそれほどアカデミックなコースではないので、それほど本が多いわけではないと思います。たぶん博士課程などに研究目的で留学している人なら、何倍もの本を送ることになると思います。

 ウォーターストーンでは、芥川龍之介や三島由紀夫の小説がジャック・ケルアック、トーマス・ピンチョン、カート・ヴォネガットなどのアメリカ作家に混じってカルト小説のコーナーに並んでいました。

 ヴァージン・メガストアでは、スティーヴ・ライヒのニューヨークでのライブ盤を見つけ、手にとって迷った挙句、思いとどまりました。以前は、CDショップに入ると何枚ものCDを束にして買っていたものですが、ここ数年はかなり慎重になっています。留学資金を貯めていた際の節約癖が抜けていないのかもしれません。

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