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11/27/2006

さわらぬ神

 もしかするともう二度と行くことはないかもしれないと思っていたバース大学のキャンパスに行ってきました。論文の修正はそれほど大掛かりにならずにすみそうです。指導教官が言うには、半日くらいですむとのことですが、おそらく3日くらいはみたほうがいいでしょう。

 ひさびさのキャンパスは、売店のつくりなどに去年とは違う点がありました。携帯に電話があり、カタールのビザをメールで送ったので確認してほしいという連絡がありました。けれどももう大学の図書館を使うことはできません。いちおう受付で交渉してみたですが、どうにもなりません。仮に入館できたとしてもPCは使用できません。

 それでもバースの友人たちは突然の訪問にもかかわらず時間を割いて相手をしてくれたので、帰りの電車に乗る寸前まで楽しく過ごせました。

 電車の座席は進行方向と逆向きでした。こうした場合、目を瞑れば前に向かって走っているような気分になれるという生活の知恵は、つげ義春の「ねじ式」で学んだものですが、私の目の前の座席に座った女性のせいで、ゆっくり眠っている余裕はありませんでした。

 彼女はワインを1本、車内に持ち込んでおり、ボトルに口をつけてひとりであおっていました。そしてときどき憤懣やるかたないという様子で、そのボトルをテーブルに強く叩きつけるのです。

 なにか命あるものを叩き潰そうとするかのようなその音は、あきらかに周囲の意識を集めていました。失恋でもしたのでしょうか。40代と思しき彼女は小奇麗な格好で化粧もしていました。ときどきテーブルに突っ伏したりしながら、彼女はワインを1本ひとりであけてしまいました。

 ボトルが空になると彼女の態度はいっそう荒れてきました。テーブルを激しく叩いたり、窓に頭を打ち付けたりし始めました。

 やがてガラスの割れる音がし、大きな破片が私の足元まで飛んできました。私が思わず席を立つと、彼女がこちらを見上げ、場違いな笑顔を見せました。

 私は別の席に移ったのですが、明らかに彼女が私のことを意識しているのが感じられました。私もできる限り彼女のほうを直視せぬよう心がけつつ、彼女の様子を敏感にうかがっていました。彼女がいつまでも割れたボトルを握り締めているのが気になりました。

 そのうち彼女は背もたれに身を任せ、足をテーブルの上に乗せ、ズボンを膝頭のあたりまで捲り上げました。その生白いふくらはぎには行く筋かの赤い筋が走り、鮮血がほとばしっていました。

 ひどい胸騒ぎを感じ、私は別の車両に移ることにしました。移った先はファーストクラスの車両で、次の車両も同様です。そこからパディントンまでの15分間、そこに座っていました。今にも彼女が私を追いかけてくるのではないかと不吉な想像がふくらみました。

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